片恋プロセス

出産

28週で性別が分かった。男の子だ。
産まれるまで性別を聞かない選択肢も
あったが、私達は聞くと決めていた。
性別が分かるまではどっちだろう?
でも無事に産まれてきてくれれば、
どっちでもいいよねと話し、分かって
からは絶対に可愛くて賢い子だと、
産まれる前から親バカ全開だ。

幸太が初めて胎動を感じたのもこの頃
だった。私はもっと早い段階で
感じていたが、幸太には伝わらず
嘆いていた。だからなのか何なのか、
私が胎動を感じてからは、
妊娠線防止クリームを塗るのは
幸太の役目となった。このクリームを
買ってきてくれたのも幸太だ。
その日も幸太がクリームを塗ってくれていて、赤ちゃんが動いた時は、ふたりで
顔を見合わせ喜びあった。こういう
喜びが日々積み重なっていくのだと
思うと心が暖かくなった。

そろそろ必要な物を揃えようかと思うと
言えば、荷物を持って転んだりしたら
大変だと、買い物は幸太が一緒の時
だけにしてと言われた。優しさは
留まることを知らず、検診で少し貧血が
引っかかった日には、
“妊婦ためのレシピ”という本を
買ってきて鉄分が多く取れる料理を
作ってくれた。夜中に足がつれば 
擦ってくれる。優しさに加え、
糖度が増した幸太の破壊力は凄い。
ちょっぴりくすぐったさを感じつつも
素直に嬉しいと思う。

お仕事は34週に入ったところで産休に
入った。っと言っても会社に
行かなくなっただけで、
家で出来る範囲の事をやっていた。
出産後も暫くは同じ様にやるつもりだ。 子どもが産まれたら大変で 
そんな余裕は無いかもしれないが、 
幸太が出来る限りサポートすると 
言ってくれた。しかも育休申請も
しようと思うと言うのだ。
育休を明けた時に仕事が遣りづらく
なってしまうのでは?と伝えたら、
“意外と仕事出来るから大丈夫!
それに俺が華と赤ちゃんと過ごしたい”
と。嬉しいっ!こんな事、
言ってくれるなんて嬉しいに決まってる!だ・け・どだ。
いくら男の人も育休を取る時代だと
言ってもまだまだ理解されない部分も 
多いはず。しかも子どもの頃から
やりたかった仕事だ。それを犠牲に
させてしまうのではないかと気が引けた。という事で話し合いを重ね、
2週間の有休後に2ヶ月の時短勤務と 
なった。ちなみに私のお休みしている 
間の仕事は兄が入ってくれる。
あまり目立ってはいないが、幸太と
出逢えたのも、幸太と思いを
伝え合えたのも何気に兄の活躍がある。
兄には感謝しかない。
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