片恋プロセス
耐える
私は宣言通り、無事に幸太と兄の
高校に合格した。もちろん幸太には
1番に連絡し、
“よく頑張ったね。おめでとう”と
言ってくれた。この言葉だけで自分の
頑張りが報われた様な気がする。
幸太も第一志望の大学に合格しており、
年も学校も違えど4月からは
2人揃って希望した学校の新入生に
なれるのだ。
お互い、新生活に慣れるのを優先し、
勉強会再開は落ち着くであろう
5月連休明けとなった。
待ちに待った勉強会再開初日。
勉強をしつつ、お互いの学校の話をし、
そろそろ終わりにしようとした時、
それまで話してた空気が一気に
変わったのが分かった。
「華ちゃん、俺、七海と付き合える事に
なった」
「えっ!?」
「卒業式の日に告白したんだ。俺、ヘタレ
だから七海との今の関係壊したくなく
て、なかなか告白出来なかったん
だけど。高校のうちは女子高だったから
良かったけど大学は共学だからさ。
これから視野が広くなって、誰か
俺じゃない人を見つけたらどうしようと
思ってね」
「そっか。おめでとう!幸太、ずっと
好きな人がいるって言ってたもんね。
想いが通じ合うなんてすごいなぁ。
良かったね!」
「ありがとう」
「まさか勉強会は止めるなんて言わない
よね!?私はただの友達の妹でしょ!?
幸太が頼りなんだから私との勉強会は
続けてね!あっ、私もう帰らなきゃ!
じゃまたね」
幸太に返事をさせないよう早口で
言ってその場を去った。
“おめでとう” “よかったね”
なんて1ミリも思ってない。
幸太を兄の友達だとも
思ってもいない。
言っていて虚しくなる…
私はきちんと笑えてただろうか。
いつかこんな日が来ると思っていた。
そんなの分かっていたではないか?
実際に幸太が自分に向ける顔とは違う表情を見たではないか?
何をそんなにショックを受けている?
私は何の為にこの時間を確保していた?
幸太に近づく為、幸太に関わる為、それが私の根幹だったはずだ。だったら
勉強会の時間がある限りこれは
絶たれていないはずだ。
欲を出してはいけない。
泣くな、泣くな、泣くな…
これが私の決めた道なのだ。