大人ってズルい
「イザベラは危ないから逃げて」

レオンはそう言いながらドラゴンに向かって魔法を放っていく。攻撃されたドラゴンは激しい怒りを見せ、イザベラの肩が震えた。あんな生物に襲われたらひとたまりもないだろう。

「無理です!先生を置いてなんて、行けません!」

このまま自分だけが逃げてしまえば、レオンとはもう二度と会えなくなってしまうのではないか、そうイザベラは思ってしまったのだ。そして、それは自分の死を考えるよりも怖い。

(私、自分自身より先生を失うことの方が怖いの?これって……)

ドラゴンが鋭く尖った爪のついた手を振り上げる。イザベラはレオンの手を引き、移動した。ドラゴンの手が当たったものは一瞬にして破壊され、床に残骸が散らばる。

「先生、ドラゴンを一緒に拘束しましょう」

「そんなの危険だよ。君にはさせられない。……させたくないんだ」

イザベラの案をレオンは一瞬も考えることなく否定する。いつものじっくり話を聞いてくれる彼とはまるで別人のようだ。
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