特等席〜私だけが知っている彼〜
写真がポストに入れられていた日から、椿芽は出勤する時などにどこからか視線を感じるようになった。そして、不定期でポストに隠し撮りをした写真が入れられるようにもなった。

「……また入ってる……」

震える手で椿芽はポストから手紙を取り出す。ポストに手紙が入れられるようになってもう三ヶ月ほどになる。警察に相談して取り合ってもらえるのかわからず、椿芽はただ怯えることしかできない。

分厚い手紙を手に持ち、椿芽はフラフラとした足取りでエレベーターへと向かう。手紙のせいでずっと食事もほとんど取れず、眠れていない。そのため、体は悲鳴を上げ始めていた。

鍵を差し込んでドアを開け、椿芽はソファに倒れ込むようにして座り、手紙の封を開ける。中から出てきたのは、いつもの隠し撮りの写真たちだった。椿芽が保育園で働いている様子まで写真に撮られており、職場が何者かにバレてしまっていることに椿芽の体に寒気が走る。

「あれ?これは何?」
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