特等席〜私だけが知っている彼〜
「何があったの?教えて。俺はいつだって椿芽に応援されて、寄り添ってもらってた。俺だって椿芽に寄り添いたいし、守りたい。……お願い、話してくれない?一人で抱え込んでいてほしくないんだ」

「……五十鈴、くん……」

潤んだ瞳から涙が零れ落ちる。部屋に差し込んできた夕焼けに照らされ、雫が宝石のように煌めいて床に落ちていく。その美しい雨を五十鈴は長い指でそっと拭い、椿芽の体は彼の腕の中に囚われてしまう。

互いの心音がゼロセンチの距離になったことで、ゆっくりと伝わってくる。椿芽は五十鈴に抱き締められながら子どものように泣きじゃくり、隠し撮りの写真や手紙のことを時間をかけて話した。

「……ごめんなさい……。誰に相談したらいいのか、警察が対応してくれるのか、どうすればいいのかわからなくて……!」

そうしゃくり上げながら言う椿芽の頭に、ふわりと大きな五十鈴の手が触れる。

「謝るのは俺の方だよ。椿芽にもっと電話をすればよかった。そうすれば、もっと早くこのことに気付いて怖い思いをさせずに済んだかもしれないのに……!」
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