特等席〜私だけが知っている彼〜
まだまだ足りない、そう呟いて五十鈴は噛み付くようにまた唇を重ねてくる。五十鈴の赤くどこかセクシーな唇は椿芽の体のあちこちに降り注ぎ、椿芽は五十鈴の背中に腕を回した。

大人気アイドルの五十鈴と、一般人である椿芽は、見ての通り交際しており、こうして広々としたマンションで同棲生活をしている。世間に知られてはいけない秘密の関係だ。

椿芽と五十鈴は幼なじみで、地元では小学校から高校まで同じだった。芸能活動に憧れていた五十鈴は高校生の頃にアイドルのオーディションを受け、何万人という応募者の中から見事選ばれた。

合格したと報告された直後、椿芽は五十鈴から「好きだ」と告白をされた。アイドルが恋愛など、普通はご法度だろう。しかし、五十鈴の所属することになった事務所は恋愛は自由で、椿芽も密かに五十鈴に想いを抱いていたため、二人は交際をスタートしたのだ。

高校を卒業してから二人は上京し、一緒に暮らし始めた。椿芽は保育の専門学校へ、五十鈴はアイドルになるための研修を重ね、今に至る。
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