特等席〜私だけが知っている彼〜
大人気アイドルの五十鈴のスケジュールはハードなものだ。ライブや握手会だけではなく、バラエティ番組やドラマにも引っ張りだこのため、二ヶ月近く家に帰って来ない時もあるのだ。今日は久々の休みの日である。

「体は全然平気、ありがとう!私も幸せだったから、そんなに心配しなくていいよ」

椿芽が五十鈴の体にそっと腕を回しながら言うと、ふわりと抱き上げられてしまう。突然のことに椿芽は驚き、小さく悲鳴を上げながら五十鈴にしがみついた。

「い、五十鈴くん!?」

「リビングまで連れて行くよ。ご飯作ったから食べよう」

寝室を出て廊下を少し歩くと、椿芽と五十鈴が家具屋に何度も足を運んで決めた温かな雰囲気のある木造家具が並んだリビングである。テーブルの上には、ツナとレタスのホットサンドやエッグベネディクト、コンソメスープなどが並んでいる。

「おいしそ〜」

「椿芽にご飯作るの久しぶりだから、張り切っちゃった!」
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