特等席〜私だけが知っている彼〜

椅子に座らせてもらい、椿芽は五十鈴と手を合わせる。そして二人同時に「いただきます」と言い、食べ始めた。

「おいしい！このエッグベネディクト、今度作り方教えて」

「全然いいよ。俺も椿芽に鶏肉のケチャップ煮、教えてもらいたいなって思ってたんだ」

料理の話をしながら朝ご飯を食べて行く。久しぶりに五十鈴と食べる朝ご飯に、椿芽の胸は喜びと幸せでいっぱいだった。そんな椿芽に五十鈴が言う。

「ねえ、椿芽の体が大丈夫ならお出かけしない？確か、駅の近くにオープンしたカフェが気になってるって前に言ってたよね？」

駅の近くにオープンしたカフェは、様々な国のスイーツが味わえることで注目を集めており、テレビでも取り上げられていた。そのため、椿芽もずっと行ってみたいと思っていたのだが、素直に頷くことができない。

「五十鈴くん、かっこいいからすぐにバレちゃうよ。私と一緒にいたら炎上しちゃうし、アイドルだってやめなくちゃいけないかもしれない。それに、いつも仕事が大変なんだから家でゆっくりしようよ」