恋人らしいこと、しよ?
彼の家で
 家を出る前に持ち物のチェックをする。

 手土産は持ったし、ハンカチティッシュや眼鏡拭きが入っているポーチもバッグに入れた。

 よし、と思って玄関で靴を履いていると。


「あれ? 姉ちゃんまだ行ってなかったの?」

 リビングのドアから顔を出した弟の穗積が、呆れを含んだ驚きの声を上げた。


「見て分からない? 今から行くところだよ」

「あんなに楽しみにしてたからもっと早く出るのかと思った」

 そう言った穗積はリビングから出てきてわたしの近くに来る。

 珍しく見送りしてくれるのかと思ったら、何かを言いたそうに視線をさ迷わせていた。


「……何? 言いたいことがあるなら早く言って?」

 遅くなっちゃうじゃない、とちょっとイラつきながら促すと、穗積はやっと口を開く。


「えっと……最近姉ちゃん、彼氏とのお出かけ楽しそうにしてるけどさ……でも同じくらいため息多いだろ?」

「え……?」

「卒業と同時に遠距離になるって分かってて、辛いのかなーって」

 ため息は無意識だったけれど、穗積の言う通りだった。

 デートとか楽しく準備をするけれど、同時に別れを意識してしまって物悲しくなってるから。
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