恋人らしいこと、しよ?
 コート越しでもお互いの体温が分かるくらいになってから、晴樹が言葉を紡ぐ。


「すっごく名残惜しいけど、風邪ひかせるわけにもいかないしな……。美穂、教えてくれ……俺のこと、どう思ってる?」

「……」

 その返事は明確で、変わりようがないもの。

 でも、それを口にしてしまったら本当に最後だと思うとすぐには声が出せなかった。


「……美穂?」

 当然だけど、何も言わないわたしに不審そうな声を掛ける晴樹。

 そのまま「まさか……」と呟きながら腕を緩めようとしたので、わたしは慌てて口を開いた。


「好きだよ! 大好きだよっ!」

 わたしのバカ!
 黙ってたら不安に思うのは当然じゃない。

 晴樹を不安にさせてしまったことを後悔しながら、わたしは叫ぶように話した。


「そりゃ、はじめは嫌いじゃないし、どっちかって言うと好きだしって感じで付き合い始めたよ? でもね、いつの間にか隣にいるのが当たり前になってて……」

 そこからは、ここ最近で積み重なった想いが溢れて一度言葉に詰まった。

 鼻の奥がツンとして、グチャグチャな顔になるのが分かっていても涙が止まらなくなる。


「でも、最近ハグしたりデートしたり、して……っふ……すっごく晴樹のこと好きになってたんだって、気づいたの……」

 想いが溢れて止まらない。
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