恋人らしいこと、しよ?
 ダメ、これ以上は言っちゃだめだ。

 理性が、そう止める。
 言ったら、きっと困らせてしまうから。

 でも溢れたものはこぼれ落ちてしまって……。


「っ! 別れたく、ないよぉ……!」

 卒業と同時に別れようと言ったのはわたし。

 半年前のその自分をビンタしてやりたい。


 こんなに辛い気持ちになるなら、遠距離恋愛になって自然消滅の方がマシだったんじゃないかって思う。


 しがみつくように抱き着いていると、晴樹もわたしを抱く腕に力を込めた。

「……俺だって、別れたくなんかねぇよ」

 悔し気な声。
 でも、晴樹は別れるのをやめようとは言ってくれなかった。


「でも、多分俺あっちに行ったら勉強やバイトとか……色々と忙しくなる。美穂に連絡することも出来なくなって、きっと寂しい思いさせる。……だから……」

 別れよう。

 言葉にはされなくても、分かってしまう。


「うっふぅ……」

 はじめに別れようと言ったのはわたし。
 でも、晴樹は晴樹でちゃんと考えてその結論を出してしまったんだ。

 だから、別れないという選択肢はもうなかった。


 溢れる涙を止められない。

 困らせるのが分かっていても、行かないでとでも言うように抱き着くのを止められない。
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