涙ノ結晶

当時、聖はバスケット部に所属していて、結構な名選手だったらしい。

「けどな、高1ん時に衝突事故に遭ってさ…右手を複雑骨折したんだ。そん時医者に全治2年って言われた。」

今はもうこの包帯位で良くなったんだけど、と聖は笑う。

きっと、全治2年なんて言われた時聖は言葉で言い表せないくらいのショックを受けたのだろう。

さっきこの話をしてくれていた最中も、悔しさでいっぱいの表情だった。


『聖…』


「ん?」


『バスケット、大好きだったんだね』


「まぁな」


私が、唯の事を好きだったみたいに。

きっと聖はバスケットを諦めれなかったと思う。


『バスケット、したかったんだよね…?』


「なんだ、一丁前に心配すんなよ。大丈夫だから」


きっと、大丈夫じゃない。
大丈夫なんか、じゃ、ない。
私が唯に、あの言葉を言われた時と同じように、忘れられない痛みなんだ。


『大丈夫じゃないよ…泣いて、いいんだよ?』


「小、牧…」


『今度、一緒にバスケットしよ?あたし、した事ないから下手くそだけど。』

「…、ありがと、な…」

いつもより弱く、あたしを包み込むように抱きしめた聖の腕は、何故か包帯が巻いてある右手が温かく感じた。


そして同時に、この時優しく声をかけてあげれない自分が虚しく思った。
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