涙ノ結晶
その後、聖に家まで送ってもらった。
私はいいって言ったのに。
まぁ、いっか。一応女の子だしね。
『ありがとね。聖、もう大丈夫?』
「ああ、俺こそ。悪かったな、あんな話聞かせて」
『ううん!あたしは、言ってくれて嬉しかったよ』
手が悴んで上手く文字を打てない。
私は時折手に息を吹きかけながら携帯の文字盤を触る。
口から出る白い息が、もう冬なのだと主張した。
「お前、もさ」
「っ?」
少し間があいて聖が喋ったから、少し驚いて体が震える。
そして突然の問い掛けに、メモ帳に打ち込むのを忘れた。
「・・・声、出ないの。理由があんだろ?」
初めて聖に声の事を聞かれたから、戸惑った。
きっと聖から見たこの時の私は、とっても間抜けな顔をしていたと思う。
口、開けたままだったしね。
多分それは、口を閉める事も忘れちゃう位驚いたから。
「あ、ごめ・・その、言いたくねぇなら、いいから」
聖は私の気に障ったのだと勘違いしてそう言った。
だけど、違うんだ。
嫌な訳じゃない。
確かに、思い出すのは辛いけど。
でも、きっと聖もそうだったんだ。
それでも私に話してくれた。
私を頼ってくれた。
だから、今度は、私の番だね?
私は、唯との事を全て、
そう、全てを聖に話した。