スカーレットの悪女
「……なんで煽るかな」



颯馬が特大のため息をつき、もう知らないと言うふうに肩をすくめた。


志勇はこんなおちょくられ方をされたのは初めてなのか、半笑いしながらもう一度距離を詰めて、今度は大きな手で顔を鷲掴みしてきた。


指先に力を込め、めちゃくちゃ痛いアイアンクローをかまされて後悔した。



「痛い!えーん、壱華ぁ……!」



こんなことなら挑発しなきゃ良かった。


涙がちょちょぎれて、とっさに声を限り壱華の名前を呼ぶ。



「実莉、来てたんだ。ごめん向こうで支度してて……どうしたの?」



やっと救世主の壱華が現れた。


志勇はパッと手を離して、何事も無かったように壱華に柔らかい視線を送る。


くそう、この二重人格!壱華の前では別人じゃん!
< 140 / 809 >

この作品をシェア

pagetop