スカーレットの悪女



「若、おかえりなさいやせ!」



荒瀬組本家に着くと、想像通りに光景が広がっていた。


時代劇に出てきそうな趣のある日本家屋。


立派な門をくぐって中に入ると、屈強な男たちが石畳の両脇に並び、頭を下げていた。


壱華はその大声にびっくりして私の手を掴み、それを見兼ねた志勇が“妹じゃなくて俺を寄りかかれよ”と言いたげに肩をぐいっと引き寄せた。


ったく、こんなことで嫉妬しないでよね。



「チッ、なんだこれ」

「久々だからね、こうして正式に兄貴が帰るの。それに今日は壱華ちゃんもいるし」

「あ?じゃあこいつらは壱華見たさに並んでるってことか。全員消す」



さらに並んでいる組員にまで嫉妬して、門から玄関まで続く石畳のど真ん中で立ち止まった。



「いや、私見たさかもよ?」



心の狭い志勇が至る所に嫉妬心むき出しでダルいから、話題を変換するために話しかけてみた。
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