スカーレットの悪女
「にしても、あの嬢ちゃん強いな……」

「ああ、若に正面切って立ち向かうなんて大したもんだ」

「黒帝の参謀だったって噂だ、ありゃやり手だぜ」



そして組員の話題は、壱華ではなく私に関してに変わった。


黒帝の参謀!?何その噂、初耳なんだけど!





「コラ、俺のことだけ考えてるんじゃねえのか?早速浮気か。どいつだ、どいつに脈があんだ。言ってみろ」



そんな組員のざわつきは、牙を剥く狼のごとく睨みつける志勇を前に静かになった。


どうやら壱華がよそ見をしたらしい。


視線を外していた壱華は、志勇の顔を見つめると笑みを浮かべた。



「わたしがこの世で志勇以上に好きなのは、実莉だけだよ」
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