スカーレットの悪女
「当時若頭だった現組長のご子息、ということで本家の者は親しみを込めて“若坊”と呼んでおりまして。
本家の者が若、と呼ぶのはその名残です」



その時、柔らかい口調でありながら、凛としてよく通る男性の声が玄関から聞こえた。


この声、もしかして。



「すみません、挨拶もまだなのに口を挟んでしまいました」



声がした玄関を見ると、照れたように笑う、美しい男がひとり。


年齢は30代前半くらい。少し長めの黒髪を耳にかけ、濃厚な色気を漂わせている。


男性なのに美人、という言葉が似合うまさに美丈夫。


間違いない、この人は。
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