スカーレットの悪女
「で、なんで志勇はイライラしてるの?」



少し目頭がうるっと熱を帯びてしまい、このまま黙ってると涙がこぼれそうだから志勇に話しかけてみた。


なーんかさっきから苛立ってない?


で、大切な壱華を放置してていいの?



「クソ親父が壱華を西に送り込めだとよ」

「……は?」

「あの野郎、壱華と目すら合わせなかった」



軽い気持ちで聞いたら、衝撃を受けて手から泥団子が滑り落ちた。


グチャ。脆くも潰れて土に還り、憂雅くんは「落ちちゃった!」と大きな声を上げる。


その声すらどこか遠くに聞こえた。
< 168 / 807 >

この作品をシェア

pagetop