スカーレットの悪女
「ごめんなさいね、冬磨がいても大丈夫かしら」

「いえ、眼福ですありがとうございます」



不意に紘香さんの視線がこちらに向けられた。


たしかに組長は恐ろしくて、志勇と比べ物にならないほど怖い。


志勇のプレッシャーが凍てつく風であるならば、組長のそれは無数の針のようで、刺される度に恐怖心を侵食していく。


でも、紘香さんのおかげでその恐怖心もだいぶ軽減されている。


そして美女と野獣の組み合わせは私の大好物だ。


見てるだけで活力になる。


眼福と口を滑らすと、組長は怪訝な顔をしてドン引きされた。


うわー、その顔志勇にそっくり。



「ふふ、噂通り肝が座った子ね」



紘香さんはくすくす上品に笑う。


組長には初対面で化け物を見るような顔をされたけど、警戒されるより変人扱いでいい。


最高権力である彼を味方にできるとは思ってないし。


今日は紘香さんとお近付きになって、組長には危険性がないことを証明できれば十分だ。


かくして紘香さんとの対談がスタートした。
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