スカーレットの悪女
紘香さんは極道の姐なのに話しやすく、うっかり余計なことを言ってしまいそうで理叶と光冴が心配した意味がよく分かった。


落ち着け、自制しろ実莉。と脳内で2人の声が聞こえて私は笑いだしそうになって下を向いた。



「お腹の傷は大丈夫?」



すると紘香さんは、途切れた会話を繋ぐために別の話題を振ってきた。


目線を戻すと彼女は少し眉を下げて心配そうな顔をしていた。



「壱華ちゃんを庇って怪我したって聞いて」

「はい、もう痛みはありません。お心遣いありがとうございます」

「あなたは本当に強いのね、祥一郎くんが一目置くだけあるわ」



紘香さんに褒められると鼻が高い。褒め上手で聞き上手だから永遠に話せる。


しかし、隣の組長がさっきから不機嫌みたいでそわそわする。


ほら、祥一郎って名前が出ただけでピクッと眉を動かして顔をゆがめている。


どんだけ嫉妬深いの、志勇かよ。


いや、志勇の父親だから志勇がこの人にそっくりなんだ。


やだなぁ、変なところ遺伝しちゃってる。
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