スカーレットの悪女

「いえ、とんでもないです」

「姉の身代わりなるなんて、自分の命恋しさに逃げ出してもよかったのに」



今の今まで穏やかなムードだったからそうやって人間観察を続けていたのに、その言葉を受けて余裕がなくなった。


あれ……紘香さんって、原作では聖母みたいな優しい人って印象だったのに。


こんなトゲを含んだことを言う人だった？


疑問に思って紘香さんの目を見ると、彼女はただじっと私を見つめて何も言わない。


ひょっとして私、試されてる？



「壱華は私にとっての全てです。あの時立場が逆でも、壱華も同じように動いたでしょう」

「信頼してるのね、お姉さんのこと」



試されているとすれば、証明しなければ。


ちやほやされてここまで来た女じゃないってこと。