スカーレットの悪女
「ええ、私が壱華を見捨てるわけにはいきません」

「……どうして?」

「荒瀬組にとって、壱華は捨ておきたい存在でしょうから」



あえて組長の目を見て言葉を発した。


睨まれるのが怖くてすぐ目を逸らしちゃったけど、一瞬瞳が揺れたから意図は伝わったと思う。



「私は、壱華がどうして他の組織から狙われているのかを知っています。
それを知った上で、壱華のそばにいようと決めました」



背筋を伸ばし、決意を声に出す。


それは一種の賭けだった。


組長相手にこの事実を打ち明ければ最悪私は消されるかもしれない。


だけど安全策に踏み切って隠し通すなんて、私の性分に合わない。
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