スカーレットの悪女
「本家の皆さんにお会いできてよかったです。どうか壱華のことをよろしくお願いします」

「最後までお姉さんの心配ですか、見上げた姉妹愛ですね」

「だって司水さんは私たちの味方をしてくれるでしょう?」

「どうしてそう思われます?私は組長付きの人間ですよ」

「だって志勇が心を許してるから」



根拠の無い発言かと思えば、的確に的を得ていて瞠目する。


すると彼女はにっこりと笑い、ぺこりと頭を下げ、潮崎の迎えの車に乗り込み去っていった。


……これは一杯食わされた。


相川実莉が居なくなり、オヤジと姐さんが残る応接間に向かう途中、感情が抑えられずほくそ笑んだ。


金獅子に対峙する小さな子猫に舌を巻く結末を迎えるとは思いもしなかった。


まさか荒瀬冬磨相手に堂々と立ち向かう人間がこの世に存在したとは。


世間知らずの面もあるとはいえ、あれ程の度量のある人間だとは思わなかった。
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