スカーレットの悪女
相川実莉。志勇が執着する女の妹。


志勇にとってはそれ以上でもそれ以下でもないはずなのに、どうやら志勇の中でお気に入りに認定されていた。


壱華に向けられる執着が愛なら、実莉に向けられるそれは好奇心なのだろう。


確かにあのタイプの人間はなかなか見ない。


いい意味で10代らしさがない。


姉が儚げな雰囲気で自然と人を引き寄せる魔性なら、妹は立ち振る舞いで人の心を掌握するのが巧みな魔性だ。


だからこそ、相川実莉は危険だと本能が警鐘を鳴らしている。


無邪気で天真爛漫な笑みの裏で、張り巡らされた戦略の罠にはめるため、虎視眈々と機会を伺っている。


分かっていて近づきたいと思ってしまう、まさに魔性の持ち主。


人間はああいった意外性に弱い。そこにコロッと引っかかって志勇すら懐柔してしまっている。
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