スカーレットの悪女
そう、兄貴は上層部すら敵に回してまである命令を断り続けている。


“相川壱華を西雲会もしくは極山会に引き渡せ”。


荒瀬にとって壱華ちゃんは厄介な荷物。

西雲会にとっては復興の切り札。

そして北は、彼女が手に入らないのであれば消し去りたいと考えている。



「どこで情報仕入れてんだ。なんでそれを知ってる」

「疑問に思うのは分かるけど先に答えて。どうして私を身代わりに差し出さないの?」

「……」



ため息をつく兄貴に対して正面から言い切ったみーちゃんを前に、兄貴は目を見開き押し黙った。


俺は察してしまった。


身代わりだったはずのみーちゃんを見捨てることが、兄貴の中で不可能に近い選択肢になってしまったのだと。
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