スカーレットの悪女
凛太郎は、私が思っているより遥かに兄想いの優しい子だ。


だけど私と違うのは、凛太郎は兄を救いたくても救えない立場であったということ。


だからこそ兄の異変に気づいていながら声をかけられなかった自分を深く責めたことだろう。


震える小さな体。優人がそっと肩に手を置いたその時、凛太郎は顔を上げて私たちの顔を見た。


こらえた涙で瞳が輝き、その一瞬の美しさに私は圧倒された。



「こうして兄と向かい合う機会をいただき、ありがとうございます」



深々と頭を下げる凛太郎。


兄の優人は言葉を噛みしめるようにうなずいて、同じように私たちに頭を下げた。
< 218 / 807 >

この作品をシェア

pagetop