スカーレットの悪女
「あのね、みてほしいものがあるんだ!」



そんなちょっとした悩みを吹き飛ばすように、憂雅くんは至近距離で笑顔で弾けさせ私を下ろすよう命じる。


腰をかがめて憂雅くんを解放すると、憂雅くんは突然走り出して去っていった。


ところがしばらくして足音が聞こえてきたかと思うと、手に何かを持っていた。



「みてみて、どろだんごぴかぴかにできるようになったよ!」



憂雅くん、まさか私に泥団子を見せに来てくれたの……?


この前初めて会った時に教えたからってわざわざ?


ちょっと待って、いい子すぎて衝動を抑えきれない。



「尊さが限界突破……!」

「オーバーリアクション……」



オタクな私は尊さの暴力に耐えきれず、膝から崩れ落ちて天を仰いだ。


凛太郎はため息混じりにぼそっと呟き、その後長いため息をついていた。
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