スカーレットの悪女
「綺麗な顔をしてますね、ガラス細工のような存在感のある繊細な顔つきは母親似でしょうか。神木の組長は大柄な体な割りに、小ぶりなパーツで形成された顔が特徴的ですからね」



司水さんは語彙力が豊富で比喩表現が独特でおしゃれ。


確かにこんなお世話係がいたら志勇も口が達者になるなと思った。



「……両親を、ご存知なんですね」



呑気な私の傍ら、凛太郎は両親の容姿について的確に当てられて恐怖に顔が強ばる。



「関東は荒瀬の庭だと思ってください、このくらいの情報を手に入れるのは造作もないことですよ」

「……お見逸れしました」

「荒瀬の安全圏にいるからと油断は禁物です。極道とは人の目を欺くものですから」

「お気遣いありがとうございます」



どこか厳しく捉えられる司水さんの口調。


13歳の少年にかける言葉ではない気がして、私が口を挟もうかと思ったけど、その瞬間息を飲んだ。


なぜなら頭を上げた凛太郎が微笑んでいたから。
< 249 / 807 >

この作品をシェア

pagetop