スカーレットの悪女
「でし?」



私は力さんに後ろから近づいてひょこっと顔を出した。


そしてニヤリと笑い、硬直する力さんの横っ腹をツンツンつっつく。



「もちろんでし、だって〜!力さんかわいい!」

「おいやめろつっつくな!」



ようやく緊張が解けた力さんは、慌てて距離を取り、志勇に一礼してバタバタと車の手配をしに駐車場に走った。



「お前もあんまり壱華にベタベタするなよ」



志勇は力さんのみならず、私にも嫉妬している。


はんっ、私に嫉妬なんざ10年早いよ!



「壱華とスキンシップするのは当たり前だからその命令は聞かない。今日は手繋いだり腕組んだりしちゃうもんね〜」

「本当に煽るのが好きだな。怒る気も失せる」



いつもの様に煽ったら、志勇はたおやかな笑みを見せた。


くっ、なんでこのタイミングで爽やかな笑顔になんのよ。


いつも邪険に扱うくせに、不意打ちを食らって私まで硬直してしまった。
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