スカーレットの悪女
「実莉、罰として来客にお茶を運びやがれ」



壱華と手を繋いでさあ出発だ!と意気込んだけど出鼻をくじかれた。


車を手配していたはずの力さんが、なぜか厨房の裏から出てきてお盆を手に私を手招いている。



「えー!いたけな少女を野獣の住処に放り込むの!?」

「野獣を手懐ける肝っ玉の実莉が何言ってんだか。お前の知り合いだから大丈夫だ」

「知り合い?誰?」

「行けば分かる。その間に車手配してくるから。厨房も忙しいんだよ。これだけでいいから手伝ってくれ!」



力さんに近づくと、2つのグラスとお茶菓子を載せたお盆をずいっと渡された。


文句言ってたけど、力さんの仕事を増やしてしまったようで申し訳なくなってきた。



「力さんごめんね、私たちの護衛っていう仕事増やして」

「そこは別にいい。厨房に缶詰になってても飽きるからな。たまにはお前に付き合ってやらぁ」



力さんは大きな手を伸ばして私の頭をワシャワシャ撫でる。


まったく、手先は器用なくせに相変わらず雑に撫でるんだから。


でもぶっきらぼうな力さんの優しさ、私は嫌いじゃない。
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