スカーレットの悪女
「絋香」
低くうなるような呼び声の中に、圧倒的な存在感を放つ気配があった。
「あら、冬磨」
振り返るとそこに厳格な雰囲気の組長・荒瀬冬磨の姿があった。
彼がゆっくりと足を踏み出し応接間に入ると、紘香さんが腰を上げる。
組長は私たちに目もくれず一直線にお母さんに歩み寄ると、彼女をじっくり観察している。
「どうかしたの」
「お前を見に来た」
「わたしを?あ、髪を切ってもらったからね。
でも、少し梳いてもらったくらいよ。変化あるかしら」
彼は、紘香さんの長い髪を指先で掬うと、不意に表情を崩した。
「ああ、綺麗だ」
あの極道の代名詞のような荒瀬冬磨が微笑んだのだ。
見たことのない優しさを表に出して幸せそうに笑うものだから、“いったい誰だこの男は”と私は思いっきり二度見してしまった。
「ふたりとも、ちょっとあっちに行ってよう」
「う、うん。そうしよう」
食い入るように観察していると、涼ちゃんが話しかけてきた。壱華もしどろもどろになって頷きそっと距離をとる。
私は亮ちゃんと紘香さんに出す予定だったお茶を組長夫妻に一声かけてささっと出し、そっとその場を離れた。
低くうなるような呼び声の中に、圧倒的な存在感を放つ気配があった。
「あら、冬磨」
振り返るとそこに厳格な雰囲気の組長・荒瀬冬磨の姿があった。
彼がゆっくりと足を踏み出し応接間に入ると、紘香さんが腰を上げる。
組長は私たちに目もくれず一直線にお母さんに歩み寄ると、彼女をじっくり観察している。
「どうかしたの」
「お前を見に来た」
「わたしを?あ、髪を切ってもらったからね。
でも、少し梳いてもらったくらいよ。変化あるかしら」
彼は、紘香さんの長い髪を指先で掬うと、不意に表情を崩した。
「ああ、綺麗だ」
あの極道の代名詞のような荒瀬冬磨が微笑んだのだ。
見たことのない優しさを表に出して幸せそうに笑うものだから、“いったい誰だこの男は”と私は思いっきり二度見してしまった。
「ふたりとも、ちょっとあっちに行ってよう」
「う、うん。そうしよう」
食い入るように観察していると、涼ちゃんが話しかけてきた。壱華もしどろもどろになって頷きそっと距離をとる。
私は亮ちゃんと紘香さんに出す予定だったお茶を組長夫妻に一声かけてささっと出し、そっとその場を離れた。