スカーレットの悪女
「あ、うん……ありがと」



だけど思い出せなくて曖昧な返事を返した。



「家まで送らなくていいか?」

「大丈夫、若頭がひとりで出歩いたら危険でしょ?」



小説内にこんな場面あったっけ。思い出そうとして理叶を突き放すために、少し意地悪な言い方をした。


理叶には暴走族の総長であるとともに、もう一つの顔がある。


それは、ヤクザの息子であるということ。



「……まだ俺は若頭じゃない」

「でも、高校卒業したら襲名するんでしょ?」

「襲名したら……実莉は俺と友達じゃいられなくなるだろ」


確か作中ではもっと将来に対してやる気があったはずけど、今はヤクザになることをすごく嫌がってる。


唇を尖らせて悲しそうな目をして……なんだこの可愛い生物。


本当に不良を束ねる総長?
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