スカーレットの悪女
壱華も微笑み、殺伐とした本家に和やかな雰囲気が流れる。



「……おい、待て」



しかし、志勇が低い声で割って入ったことによって一気にかき消された。


志勇は眉間にしわを寄せ、なぜか凛太郎の顔を凝視した。


凛太郎はさすがに驚いて、ちょっとずつ後ずさりしながら目を丸くしている。



「凛太郎だと?まさかこいつが神木の次男坊か?」



……あ、そうだった。志勇は凛太郎のことを女の子と勘違いしてるんだった。


今やっと男だって分かったの?道理で壱華の前なのに嫉妬しないなと思ってた。


私は凛太郎の前に出て、腰に手を当て笑った。



「そうだよ、凛ってば綺麗な顔してるでしょ?」

「紛らわしい呼び方すんじゃねえ」

「あー、怖い怖い。どんだけ嫉妬深いんだか」



完全に勘違いしていたらしい志勇。自分が勘違いしてたくせになぜか私が睨まれたから、怖がる素振りを見せて壱華と腕を組んで歩き出す。


「てめえ待てよ」と追いかけてくる志勇を無視して、壱華と本家の玄関まで一緒に歩いた。
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