スカーレットの悪女
「安心するのはまだ早い」



すると、志勇が震える私の背をさすりながら声をかけてきた。


優しい手つきに驚いて顔を上げると、志勇の真剣な眼差しとかち合った。



「襲撃者はひとりとは限らない。まだこの周辺をうろついてるかもしれねえ、一旦中に入って門を閉める」

「……分かった」



志勇は冷静に指示を出し、壱華を抱きかかえて周囲に警戒しながら本家の門をくぐった。


私も立ち上がろうとしたら、腰が抜けていることに気がついた。


目の前には、暴行をされ続ける襲撃者の姿が。すでに顔は原型を留めていなくて、血にまみれた姿で抵抗する様子もない。



結局、こうなってしまうのか。


神木を守っても、こうして別の誰かに白羽の矢が当たってしまうのか。


甘かった。神木優人を守れば、こんな惨劇は起こらないと思っていたのに。
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