スカーレットの悪女
「実莉さん、大丈夫ですか!?」

「凛……」



呆然とその場に座り込んでいたその時、突き飛ばした凛太郎が駆け寄ってきた。



「座り込んでる場合じゃないですよ、早く中に入りましょう」

「その、腰が抜けちゃって……」



私の腕を引っ張ってきたけど、いくら足に力を入れても立ち上がれない。



「実莉、抱えるからじっとしてろ」

「え、ちょっと……うわっ!」



見かねた剛さんが私を俵抱きして肩に担ぐ。


一気に目線が高くなって視界が激しく揺れる。


その不安的な視界の中で、心配する凛太郎の顔と、もはや動かなくなってしまった襲撃者の姿が視界に映る。


壱華を救い、神木兄弟を助けられた。


そのはずなのに釈然としないのはどうしてだろう。


私は複雑な心境で本家に戻り、恐怖心を分散させるように壱華としばらく抱き合っていた。
< 284 / 807 >

この作品をシェア

pagetop