スカーレットの悪女
情けない。


あらゆる想定をして、壱華を守ると豪語しておいて、結局覚悟ができていなかった。


考えうる最善を尽くした。誰も怪我しなかった。


だけどこんなにも恐怖を感じている。


美花に刺された時より、よっぽど強い恐怖だ。


ヤクザとは、倫理観を持ち合わせておらず、簡単に命を奪う手段を持っている組織だ。


分かったつもりが全然分かっていなかった。



「志勇、犯人の足取りは掴めた?」



だけど、後悔するよりなぜこうなったのか情報が欲しい。


私は応接間を抜け出し、ちょうど話し合いを終えて廊下に出てきた志勇に声をかけた。
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