スカーレットの悪女
「むっ、んんー!」

「辛気臭え顔すんな。お前は馬鹿みたいに笑ってた方が似合う」

「慰め方下手くそか!」

「うるせえな、俺は壱華以外には優しくするつもりはねえんだよ」



志勇はいつもの雑なスキンシップで私の気分を変えると「今日は壱華と本家に泊まるからさっさと潮崎に迎えに来てもらえ」とうっすら笑う。


どうせ壱華と本家に泊まれることが嬉しいんだろうけど、志勇のおかげで私の気持ちも少し楽になった。



「私が死んでも、壱華と幸せにね」

「馬鹿言え、憎まれっ子世にはばかるだ。お前は簡単に死なねえさ」



志勇は投げやりな気持ちを乱暴だけど払拭してくれる。



「不安ならもう少し周りを頼れ。荒瀬はお前たち姉妹の味方だ」

「……ありがとう」



殺伐としたこの世の中で、最後の任侠団体である荒瀬組。


志勇は紛いなりにもその器の持ち主だと思った。


ひとつ深呼吸をして笑うと志勇は「もう大丈夫だな」と呟いて壱華の待つ応接間に向かった。
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