スカーレットの悪女
私は志勇と顔を見合せた。


志勇は切れ長の目を丸くさせて心底驚いている。


こんなにうろたえてる志勇初めて見た。


たぶん、こんなに怒った壱華を見るのは初めてなんだろう。


分かるよ、ふだんの壱華と全然違うもん。



「早く正座して?わたし、とっても怒ってるの」

「は、はいっ!」



言葉は優しいけど、今度は笑みを消して無表情で命令されたから即座に従った。


志勇は首を傾げ、混乱状態で私の隣に正座した。


若頭ともあろう男が彼女に正座しろと言われて素直に従うとかウケる、なんて客観的になってる場合じゃない。


ヤバい、壱華が怒ってる。
< 308 / 807 >

この作品をシェア

pagetop