スカーレットの悪女
いったい何年ぶりだろう。


ここまでの激怒は小学生の時、飛ばされた壱華の帽子を追いかけて川に飛び込んだ時以来だ。


あの時は“わたしのために無茶しないで!”って怒られたんだよね。


壱華は昔から、私が無茶すると必ずと言っていいほど怒った。もっと自分を大事にしてって。



「みーちゃんいる?」



正座して壱華の言葉を待っていると、颯馬さんがぬっとリビングのドアを開けて入ってきた。


たぶん私に用事があったんだろうけど、私と志勇が並んで正座しているのを見て硬直した。



「え……何この空気。なんで兄貴正座してんの?」

「颯馬さん、少し静かにしてもらえますか?」

「あ、はい」



颯馬は何度も瞬きして信じられないって顔をした。しかし、いつもと違う壱華の様子に驚いて今度は眉をしかめた。


百面相かよ。いやその気持ちもわかるけど。


雰囲気違いすぎて戸惑うよね。
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