スカーレットの悪女
「壱華に不安な思いをさせて悪かった。反省してるから許してくれ」



志勇は畳みかけるように渾身の困り顔をした。


颯馬は口をぽかんと開けてあの帝王が下手に出る姿勢に驚いている。


そのわずか数秒に立ち上がって壱華が座ってるソファの隣に腰を下ろし、壱華の手をぎゅっと握って見つめ合い、許しを乞う。


うまいなあ、形勢不利だったのにあっという間に自分のターンにしてる。


さすがヤクザだ。人の心を掌握する天才。


でも、ウチの壱華をナメてもらったら困る。



「でも、これまで実莉を利用してきたことは事実よね。そんなわざとらしい顔してもダメだから」



へへん!演技だってバレてやんの!


志勇は図星を突かれて、鳩が豆鉄砲を食らったみたいに目をまん丸にした。


残念ながら、壱華の怒りはかなり根深かったようだ。
< 312 / 807 >

この作品をシェア

pagetop