スカーレットの悪女
思えば実莉は、昔から不思議な雰囲気をまとった子だった。


わたしのことはなんでも知っていて、口癖のように『壱華を守る』と言って無茶ばかりする。


よく理解できない言葉をつぶやいて、なんの話?と聞いても『こっちの話だから壱華には関係ないよ』ってはぐらかされるから、無理に聞き出したりはしないけど。



「本来ならって、何?」

「ん?私そんなこと言った?いや実は、壱華に信頼してもらうために半年は我慢するって志勇言ってたの。それなのに手出しやがったんだと思ったら許せなくて」



理由を聞いて納得したけど、実莉はわたしと違って嘘をつくのが上手だ。


確信はできないけど今の発言はおそらく嘘だ。


では、どうしてそんな嘘をつくのだろうか。


きっと実莉にとって都合の悪いことなんだ。


もしかして実莉、未来予知の超能力を持ってたりして。


確かにそんな秘密誰にも言えない。


……なんて、考えすぎか。



「やっぱりあいつ嫌い!」



実莉は多少腹を立ててるけどいつもの調子に戻って、ソファに突っ伏してそのまま眠ってしまった。


わたしは涼と顔を見合わせ、まだまだ子どもだねと癒された。
< 328 / 807 >

この作品をシェア

pagetop