スカーレットの悪女
女のすっぴんなんてだいたい眉毛ないわ。


掴まれた顔を大袈裟にブンブン横に振って拘束から逃れた。


すると、私たちの間にいた壱華が目を開いた。


壱華は私と志勇を交互に見ると、志勇に寝起きのとろんとした目を向ける。



「志勇……」

「ん?どうした」



志勇は壱華の頭を撫でながら甘い声で対応している。


おえっ、鳥肌立つわ。



「今日は実莉と遊びに行く予定だったの。その後迎えに来て」

「一緒に行ったらダメか?」



志勇は母性本能をくすぐるような切ない表情で壱華を見つめる。


これは演技じゃないな。本当に限界だったらしい。
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