スカーレットの悪女
「好きなだけ買ってこい、俺は少しこいつと話がある」



壱華は一瞬戸惑ったけど、志勇の顔を見て何かを察したように頷き、護衛の人と一緒に店内に入っていった。


見渡しのいい店舗だし、そんなに広くないから護衛はいらない気がするけど、まあ用心するに越したことはないか。


志勇は店内を歩き回る壱華を目で追いながら、通路の壁によりかかって私の隣に立った。



「志勇から私に話って何?怖いんだけど」



身長差が歴然だから隣に並ぶと首が痛い。


話しかけると、志勇は視線を前に向けたまま口を開いた。



「お前、理叶にいたく気に入られてるみてえだな」

「理叶?うん、仲良くさせてもらってるよ」



志勇は理叶に関心がないと思ってたから、その名前が口から出てきて驚いた。


確かに不思議だと思ってた。幼なじみなのに理叶と荒瀬兄弟の間には壁があったから。


志勇も颯馬も、涼とはフランクに接するのに理叶には警戒して他人行儀なのは明確だった。



「あいつには気をつけろよ」
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