スカーレットの悪女
「どうだった」

「荒瀬志勇は、相川壱華を手放す気はまったくないようです」



昼間の喧騒が嘘のように静かな丑三つ時、私は都内の高層ビルの最上階に訪れた。


ここは極山が秘密裏に所有しているビル。


最上階は海外マフィアなどと交渉する場になっており、極山の人間以外はこの場所を知らない。


では、なぜ私のような一介の警察官がこの場所を知っているのか。


それは――あろうことか、利害一致で警察とヤクザが手を組んだからだ。



「だとすればさっさと殺してしまえ。西に渡ればただの骨折り損のくたびれ儲けだ」



正確には、私の目の前に座る警視監の男が、北の龍・山城総司(やまぎそうし)に魂を売ったのだ。



「荒瀬志勇は反対を押し切って壱華を侍らせているようです。西に送り込むことはありえないでしょう」

「あの荒瀬が自ら膠着状態を招いているというのか?そんなわけがない、何か企んでいるに違いない」



馬鹿なことを。貪欲な龍に骨まで食いつぶされるのは目に見えているのに。
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