スカーレットの悪女
耳をつんざく乾いた音がして、風圧が耳を掠めた。



「えっ……」



周囲にこだまする、この爆発音のようなものには見覚えがある。



忘れもしないあの夏の日、壱華を狙った拳銃の発砲音。



以前より大きく感じたその音を捉えた直後、その銃弾は無情にも剛さんの体に着弾した。


銃弾は剛さんの体を突き抜け、フロントガラスに血が飛び散り、肩の付け根を撃たれた衝撃で剛さんは運転席に押し戻された。



「ぐうっ……!」

「剛っ!」



颯馬がとっさに剛さんを受け止め、見たことのない焦りの表情を浮かべて私の顔を見た。


私は何が起こったのか分からず硬直して、ただその顔を見つめることしかできなかった。
< 406 / 807 >

この作品をシェア

pagetop