スカーレットの悪女
「ねえ、どうして……?」

「ごめんね、こうするしかなかったんだ」



近づいて問いかけると、ライフルを持つ優人の手が震えていることに気が付いた。


だけど表情は穏やかで、いつもと変わらない口調だった。



「山城から逃げられる術はない。あの夏の日、俺はそれを痛感した」



ところがその柔和な声は、山城と発したことで憎悪を含んだ声色に変わった。



「“あの夏の日”……?」

「荒瀬の本家で襲撃事件があった日のことだよ。荒瀬は君のお姉さん、壱華が狙われたと思ったみたいだけど本当は違う」



怒りを抑え、淡々と語る優人。


そうして、誰も知り得ない最悪の真実が紐解かれようとしていた。




「あれは……凛太郎を狙って寄越した鉄砲玉だ」



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