スカーレットの悪女
立ち尽くしている場合じゃない。生きている人を優先しないと。


振り返ると、颯馬は剛さんの手当てをして、志勇は車から出て理叶と光冴の怪我の具合を見ていた。



「理叶、光冴!どこを撃たれたの!?」

「俺たちは大丈夫、かすっただけだから」



駆け寄ると、太ももを押さえる理叶は私に大丈夫だと言い聞かせた。


マフラーを血まみれの腕に巻き付ける光冴は、立ち上がって周囲の安全を確認し、理叶に「立てるか」と聞いていた。



「たぶん、最初から優人は俺たちを殺す気なんてなかった」



ゆっくりと立ち上がった理叶は、数メートル先に倒れている優人の遺体を見つめていた。



「じゃあ、何のために……あっ」



私は自分で呟いて思い出した。


気が動転して忘れていた。


この一連の襲撃事件は、これから起こる悲劇の陽動に過ぎないってこと。


極山の真の目的は私の殺害じゃない。


奴らの狙いは、壱華だ。
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