スカーレットの悪女
鍵を受け取った志勇は壱華を車内から連れ出して一足先に車に向かう。


颯馬は剛さんに肩を貸してゆっくりと車に向かっていた。


私は理叶と光冴に「潮崎の本家に着いたらすぐ連絡してね」と念を押して別れた。


それから志勇たちと合流するために、少し離れた場所に停車させていた車に走った。


ところが、背後から黒いバンに追い越された。


滅多に車の通らない場所に出現したその車は、志勇たちが乗り込もうとしていた車の前に急停車した。


突然のことに唖然とする志勇の前に、後部座先のドアが勢いよく開いた。



中から出てきた男は──拳銃を握っていた。



血の気が引いた。丸腰の志勇に成す術はない。


ましてや傍らに壱華がいる。状況は一転、最悪の展開を迎えてしまった。



「志勇、壱華！」



走り出したその時、男は引き金に指をかけ、銃声が反響して響いた。


私はまたしても、仲間を守るできなかった。
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