スカーレットの悪女
「……兄貴!?」

「颯馬、俺のことはいいから若を!」



焦りをにじませた颯馬と剛さんの声が後方から聞こえる。


志勇は壱華をかばうように抱きしめ、撃たれてもなお微動だにせず壱華を離さなかった。


志勇は背中を撃たれていた。


激痛のはずなのに、志勇はただ痛みに耐えて壱華を守ることだけを考えている。


私は二発目を撃ち込まれる前に、襲撃した男と志勇の間に入ることに成功し攻撃は阻止できた。



「手負いの獣は危険だと言いますが、ずいぶんと大人しいですね。
あなたは東の狼。首だけでも獲物に食らいつくという話を聞いたのですが」



この声に聞き覚えがある。


逆光で顔が見えなかったけど、目をこらすとそこにいたのは佐々木だった。
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