スカーレットの悪女
「兄貴、撃たれたのか!……このっ!」



すると、剛さんを置いて走ってきた颯馬が勢いに任せて佐々木の顔を殴った。


佐々木は無抵抗だった。



「……さすが狼。仲間意識が強い。なるほど、兄弟そろって大希が気に入る獰猛さ……」

「おい、何をワケのわからねえこと言ってやがる。謝っても済む話じゃねえぞ」

「それよりあなたは若頭の手当をしたらいかがでしょう。時間がありませんので、優先順位を見誤ると取り返しがつきませんよ」



颯馬は佐々木の胸倉に掴みかかったけど、志勇の怪我の具合を見てすぐに手を離した。


志勇の背中はじっとり血で濡れていた。


壱華は震える手でその部分に触れてしまい、血濡れた自分の手のひらを見つめると、やがて決心したように顔を上げた。


手の震えは止まっていた。


……まさか壱華、佐々木に従うつもり?
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